超現実主義的日常

よしなしごとを綴る

【ネタバレなし】小説あります 感想

春はあけぼの。YOYOみなさん春休みはいかがお過ごしでしょうか。僕は元気です。が、一日一冊といったにも関わらずなんだかんだで一冊も読めてなかったみたいです。三月からは頑張ります(たぶん)。

 

今日紹介するのは門井慶喜の「小説あります」。今回はネタバレなしということだが、これが大変難しい。感想を書く意味は0に等しくなるからだ。というのも、それは本の背表紙のあらすじの域を出ないのだ。それならば背表紙でも読んだ方がマシである。強いていうならば、申し訳程度の読者の主観が入ることくらいしか良いところがない気がする。しかし、ネタバレありで書くというのもそれはそれで考えものではある。今度は原本をみる意味がなくなってくる。なので今回は実験の意味も込めてなるだけネタバレを少なくかつ魅力的に書き切りたい。

 

などとでんでんしたところで、あらすじを垂れ流して感想を書いていきます。

 

まずこの小説には二つの柱がある。

一つ目は30年前失踪した架空の小説家、徳丸敬生の遺稿集に残された本人のサインの謎を解き明かしていくこと。(遺稿集とは死後出版されるものでそれにサインがあるのはおかしいため)

 

二つ目は主人公老松郁太とその弟勇次の間で起こる「人はなぜ小説を読むのか」という命題を巡る兄弟喧嘩。

 

この二つの軸が、どちらかといえば前者が後者に、関係していくように感じられた。

 

次に感想として良かった点、悪かった点を、ネタバレを少なく語りたい。

 

良かった点

 

1. サインに関する謎は面白かった

 

ミステリー作家なだけあって最後のどんでん返しは非常にうまく面白かった。これに関しては期待してもいい気がする。

 

2. 人がなぜ小説を読むのかについての議論が深まった

 

作中で語られる答えについて賛否は人それぞれであろうが、わりかし誰しもがパッと思いつくようなことも挙げられていて自分の中では知見が得られたように感じる。

 

 

 

悪かった点

 

1. 人物の深掘りが浅すぎる

 

登場人物は割と多い気はするのだが、それぞれの人を中途半端に深掘りして途中でやめた感がすごい。あと、人物の性格を表すためのエピソードなんかも語られるのだが浅い。全体的に人物に関してはふわふわしていてそこがイラっときた。

 

2. 人はなぜ小説を読むのかについての答えに納得がいかない

 

納得がいかないは言い過ぎた。若干納得はできる。だが足りない。この間誰かのツイートで見かけたが期待をかけすぎるとそれを少し超えるくらいの結果を出さないと逆効果になってしまうというのがあって、まさにその失敗がこの本にはあるのではと思った。まあとはいえこれは当たり前である。文学部に文学なんて何の役に立つの?と聞いた時の完璧な回答を未だネットでは散見しないところを見るあたり明らかであったししょうがない気もする。答えはあなたの心の中に。

 

 

というわけで総合して☆5つ中★★★☆☆という感じでした。

今月こそは文化にたくさん触れるぞー!